015 定年後のファッションを考える(前編)── 60代からの「清潔感」と「品格」の話
- 空苑
- 8月21日
- 読了時間: 6分
更新日:8月31日
さて、空苑です。
今日はシニアのお洒落についてです。 お洒落と言ってもおすすめのブランドやアイテムを紹介するものではなく、お洒落に対する心構えを話してみたいと思います。
歳を取って、外出の機会が減り、家にいる時間の方が増えてくると、ついつい新しい服を買ったり、鏡の前でコーディネートに悩んだり、とかいうことが少なくなります。
定年後のファッション──老け込む理由は「スーツを脱ぐこと」かもしれない
あなたの周りにも、定年後に急に老け込んだように見える男性はいませんか?
その大きな要因のひとつは、「背広を脱いだこと」にあるのではないかと、私は考えています。
スーツはビジネスマンにとっての“戦闘服”。仕立てが良く、サイズの合ったスーツは姿勢を正し、印象を引き締めてくれます。
しかし、長年スーツに頼ってきた人ほど、カジュアルな装いへの切り替えが難しいものです。

スーツより難しい「カジュアルコーデ」
私自身、現役時代はスーツとカジュアルを使い分けていました。
職種柄、内勤でクリエイティブな仕事をする日と、対外的なフォーマル対応をする日がはっきり分かれていたためです。
実のところ、カジュアルな日の方がコーディネートに悩むことが多かった気がします。
カジュアルは選択肢が多いぶん、「どこまで崩していいのか」の判断が難しく、
手を抜いて“おじさんの休日の散歩”のような格好で職場に向かえば、周囲から失笑を買いかねません。
また、年齢や役職が上がるにつれて、カジュアルとはいえそれなりに質の良い服を着る必要も出てきます。
さらにオフィス向けのカジュアルは、休日に着るには少し堅い印象になりがちで、
結局、オフィス用とプライベート用で別々の服を用意しなければならない、というのも予想外の出費となりましたね。
スーツを脱いだあと、何を着るか──それは単なる服の話ではなく、「どう生きるか」にも関わってくる問題
現役時代、スーツ一択だった人ほどカジュアルコーディネートの難しさを痛感するはずです。
気づけば、無頓着な服装で過ごす日々が続き、あんなにスーツ姿が決まっていた人でも、一気に見た目年齢が上がってしまう──そんなことも起こり得ます。
ファッションは「延長自我」という心理学の概念で語られることがあります。
服装や持ち物など、人から見られるものは、その人の“自我の延長”であるという考え方です。
確かに服やアイテムを選ぶときは、どこかに自分の主張や意気込みが盛り込まれるものです。
勝負服などはまさにそうですね。
これでもか、というくらい主張が強いファッションの方もたまに見かけますが、歳を取ると勝負をかけるような場面も減り、自然と主張も控えめになってくるものです。
私も今は若いころに比べてファッションに対して「引き算」をすることを覚えました。
かといって、カジュアルと無頓着との境が曖昧になってしまうのも良くないと思います。
シンプルで清潔感のある装いを心がけることが、私たちシニア世代の大人としての品格ではないかと思います。
上質な素材を選ぶ目
私が服を選ぶときに意識しているのは、「素材感」です。
多少値が張っても、ブランドの主張が控えめで、良質な素材のアイテムを選びます。
それを、ユニクロやGUなどの手頃なアイテムと組み合わせる。
これが、私の理想のスタイルです。
ユニクロ革命はすごいですね。
あの価格でそこそこ良質な素材の服が手に入るとは、DCブランド全盛時代では考えられませんでした。
勿論ハイブランドには値段なりの良さがあります。
ここぞというこだわりのある所には、思い切ってお金をかけましょう。
コスパで越えられる壁もあれば、越えられない壁もあることを見極めるのは重要です。
スーツも、大人の装いとしてまだまだ重要なアイテムです。
スーツはシニアにとって一番無難に上品さを演出できるアイテムではないでしょうか。
ただし、**ビジネススーツとは異なる「遊び心のある一着」**を選びたいところ。
新調せずとも、私は現役時代のお気に入りのスーツをちょっと遊び心のある感じにリフォームしてもらって使っています。
ただし、仕立てやサイズ感に妥協すると、一気に「くたびれ感」が出てしまうので要注意です。
個人的には、大正時代の**「モボ(モダン・ボーイ)」風のハット&スーツスタイル**が似合う老人に憧れていますが、あの品のある渋さにはまだまだ遠く及びません。
難しいけれど楽しい「色選び」
おしゃれなシニア男性を観察していると、原色をワンポイントに使ったり、ベージュやレモン色などの柔らかな色を上手に取り入れている方が多いです。 きっと若いころから、センスを磨いてこられたのでしょう。
一方で私はというと、「シック」という言葉を言い訳にして、つい地味なグレーや黒ばかりを選びがちです。 黒は無難で、七難隠してくれますので、若いころから自分の中で「黒神話」は根強くありますが、「これではいかん」と、定期的にワードローブを見直し、意識して色を取り入れるようにしています。
色と言えば、人とは一味違った色を見つけるとテンションが上がりますね。
同系色の中でもひと際目を引く色、これは明るさや彩度だけの問題ではなく「いい色出てるなあ」と思える、かつて見たことのない色。
でも、残念ながら、「おっ」と思って目を引いた色は・・・やっぱりほとんどの場合、1桁値段が違う。ハイブランドなんですね。
ハイブランドは、色見本にないような微妙な色を投げてきます。
これがコスパで越えられない壁か、と泣く泣く見送ることもあります。
自分のスタイルを大切に
ここまでお話ししてきたことは、あくまで定年後のファッションに対する私なりの考え方です。
若い頃は、ブランドロゴを大きくあしらった“主張の強い服”を好んで着ていた時期もありましたが、いまはその反動なのか、シンプル・イズ・ベストがモットーです。
現役時代に比べて外出の機会がぐっと減り、たくさんの着回しは必要なくなりました。
これからは、素材を重視し、清潔感を忘れず、自分の心がときめく服を選ぶこと。
それは、年齢を重ねた今だからこそ大切にしたい姿勢です。
「60を過ぎたら好きなことをやろう」と他の記事で語っておきながら、今回はやや保守的なトーンだったかもしれません。
しかし、あなたのファッションは、あなたの人生そのもの。
自分が好きな服をまとって、心躍る毎日を過ごしましょう。
後編では、意外と定義の難しい「清潔感」なるものについてもう少し掘り下げてみようと思います。

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